天然100%という一線
うのもりやの果実羹には、はっきりとした線引きがある。「葡萄羹」は天然100%の山葡萄果汁だけ、「無花果羹」は天然100%のイチジクだけで作られている。かつて加茂周辺の山道では山葡萄が手軽に摘め、多くの家庭の庭にイチジクが実っていた。いまではどちらも入手が難しくなったが、それでも天然のまま使い続ける方針を崩していない。
透明感のあるワインレッドの「葡萄羹」は、果汁羹ならではのつるりとした食感が持ち味だ。素材が手に入りにくくなるほど、この一線を守り続ける意味は重くなる。作り手のこだわりが、色と喉ごしにそのまま出ている。
江戸から続く菓子屋の現在
うのもりやが加茂の地で商いを始めたのは、江戸時代の寛政年間、1789年から1801年にかけてのことだ。明治4年から菓子製造販売を本業に据え、9代目の山内美恵子さんが今の店を受け継いでいる。看板の「カルルス煎餅」は明治41年の全国特産品博覧会で受賞した加茂の代表銘菓で、手焼きの伝統を守りながら軽い口当たりに焼き上げている。
菓子の種類は果実羹や煎餅にとどまらない。まん丸のブッセにチーズクリームを挟んだ「雪とけ」は1個162円、要冷蔵のため7月から9月中旬は販売を休む。和菓子と洋菓子の両方を自店で手がけているため、季節や用途に応じて選べる幅が広い。
菓子を入り口にした店の奥行き
うのもりやは菓子の製造販売を核としながら、店の中に複数の楽しみを抱えている。1階には手作りケーキとコーヒーを味わえるティールームがあり、坪庭を眺めながら過ごせる。地下のワインカーブにはフランスなど世界各国のワインが並び、加茂の地酒や輸入品も扱う。
2階の吹き抜け部分は回廊の常設ギャラリーで、奥の画廊「山内堂」では不定期に美術品の展示が開かれる。加茂市仲町2-2の店には12台分の駐車場があり、加茂山公園の散策や商店街での買い物と合わせて訪れやすい。営業は9時半から18時半、日祝は18時まで、水曜が定休となっている。


