先代の一声から受け継がれた「とんてき」の正統
「明日からここで働け、とんてきも暖簾わけしてやる」——創業のきっかけは、先代・下田憲雄氏のそんな豪快なひと言だった。数年間の修行を経て1978年に商号登記を済ませた名物とんてき 來來憲は、以来40年以上にわたり素材もタレも製法も一切変えていない。「とんてき」の登録商標を持つ店舗として、鈴鹿の食文化に深く根を下ろしてきた。二代目店主・紀平弘次氏が守り続ける味は、本店ゆかりの常連から「本店そのまま」と言われるほどの再現度を誇る。
個人的には、昭和から令和まで一度もレシピを変えていないという事実が何より印象的だった。時代ごとに流行の味付けや調理法が移り変わるなかで、同じ一皿を出し続ける姿勢は並大抵ではない。創業時の思いをそのまま引き継ぐことに、店としての軸がはっきり見える。こうした一貫性が、世代を超えたリピーターの存在につながっている。
国産豚と秘伝のタレ、そして三重県産コシヒカリ
名物とんてき 來來憲のトンテキは、国産豚の厚切り肉をグローブ状にカットし、大粒のニンニクとともに秘伝のタレで焼き上げる。故・下田憲雄氏から直接伝わった調理法で、肉の産地やグラム数、製法の詳細はすべて非公開のまま。門外不出のレシピが、他では出せない味の根幹を形づくっている。ニンニクの香ばしさと濃厚なタレが絡んだ厚切り肉は、見た目のインパクトも相当なもの。
白ご飯には三重県産コシヒカリを使用し、契約農家が肥料にカニの粉を混ぜて栽培したものを仕入れている。年ごとの米の状態に合わせて乾燥具合まで調整するという手間のかけ方で、口コミでは「ご飯だけでもおかわりしたくなる」という声が目立つ。トンテキのタレとの相性を第一に考えた米選びは、定食全体の完成度を底上げしている。脇役に見えるご飯にこれだけの労力をかけている店は、そう多くない。
豚肉・ニンニク・キャベツの三位一体
牛肉や鶏肉の約10倍ものビタミンB1を含む豚肉に、ニンニクのアリシンが組み合わさると吸収効率が一気に上がる。疲労回復や滋養強壮、脳の活性化まで期待できるとされ、スタミナ料理としての実力は折り紙付き。付け合わせのキャベツも葉5枚で1日分のビタミンCが摂れるとされており、免疫力の向上や胃腸の消化促進に寄与する。ニンニクの殺菌・解毒作用も含め、一皿で栄養バランスが整う構成になっている。
夏場の来店客からは「夏バテ気味のときに食べると翌日の体調が違う」という感想が寄せられることもあるという。年齢や性別を問わず支持される背景には、単なる味の良さだけでなく、食後に身体が軽くなるような実感がある。
鈴鹿の住宅街で40席、テイクアウトも終日対応
三重県鈴鹿市自由ヶ丘の住宅街に位置し、東名阪自動車道の亀山JCTから約25分、鈴鹿サーキットからは約15分ほどの距離。カウンター8席とテーブル席32席の計40席を備え、一人でもファミリーでも気兼ねなく使える空間が広がっている。名古屋西ICからでも約50分でアクセスでき、観光ルートに組み込む県外客も少なくないようだ。地元のリピーターと遠方からの訪問者が入り混じる客層は、この店の知名度を物語っている。
餃子やチャーハン、焼きそばなどテイクアウトメニューも終日用意されていて、仕事帰りに立ち寄って持ち帰るという使い方をしている常連もいる。たとえば鈴鹿サーキットでのレース観戦後に寄って、自宅用にトンテキ弁当を買って帰る——そんな週末の過ごし方が定着しているファンも一定数いるらしい。店内飲食だけに閉じない間口の広さが、日常のさまざまな場面に名物とんてき 來來憲の味を浸透させている。


